牢の中のアホエロ話

 

あーくそ忌々しい!! 自分でも何だってこんなことしなきゃならないんだか、自問自答して情けなくなる。俺は今 、上半身に前のはだけた囚人服を一枚ペロリと羽織っただけで後は裸というあられもない格好で 、ワセリンで尻の穴を自分でならして男に視姦されている。何と言うかこんな事態を引き起こした自分自身を呪いたくなる。

事の発端はこうだ 。昨日あいつが、
「君に会いたい。会って直接話がしたい」
なんて熱っぽく言うから 冗談半分で、
「だったらこっちの牢まで来いよ」
って言ってやったんだ。で…そしたらあいつが、
「どうやって ? 」
と真面目に聞いてくるもんだから
「そんなの 看守を脅すなり、洗脳するなりやり方はいくらでもあるだろ? 」
って冗談半分に返してやったら、
「そうだね!今度試してみる」
なんて返してくる。 …で、実際に今夜押しかけてきたわけだ。
深夜に誰かが入ってきた気配で目を覚まして 俺はまたてっきり バッツがややこしい事件の相談にでも来たのかと思ったんだが (バッツは大体夜中にしか会いに来ないし、 会いに来たら深夜でも看守に起こされる。少しは時間を考えろよな!) 目を開くとこいつが立ってたってわけ。
ニュースでこいつの顔は知っていたが 、改めて見ると いかにもおとなしい人形みたいな可愛らしい顔立ちで、だが側で見ると すらりと背が高い。ナードだが美青年といった感じだ。
「 初めましてだなエドワード。それともリドラーと呼ぼうか?」
あいつは俺をじっと見たまま固まって動かない。
……まあ、それもそうだろうな。
誰だってこんな姿を見るや戸惑うに決まってる。 なんせあちらこちらに血が滲んで所々黒ずんで爛れた ボロボロになったケロイドの白い肌 、まだらに剥げた青カビのような色の緑の髪、 笑顔のように赤く避けた口元。 うん、我ながら怪物だ。ゾンビの方がましだなこれは!(最も俺はこの姿を気に入っているけどな!) まあ逃げ出さないだけ上等 …って何で俺に抱きついてくんだよこいつ!
えっ、あ、しかも泣いてる!?
「……君もつらかったんだね 」

……あー、鬱陶しい。
そういやこいつに廃液タンクに落ちたってこと冗談めいて話してたわ……。勝手に感情移入して、勝手に自分に置き換えて、 勝手に俺の気持ちになって 。……そういうのうんざりするんだよ。
最もそういう輩をからかうのはそれはそれで面白いんだが、 そういえば愛しのコウモリも 俺がタンクに落ちたのに罪悪感を持って いつも延々と苦しんでいて 見ていて面白いことこの上ない。
俺の姿を気味悪がって恐れる奴らには 効果的な脅しとして使えるし、 俺の姿に同情を抱く奴には 善意を利用できるから 俺としてはそれなりにこの姿を気に入ってるんだが ……こいつは後者か。 恐れられて せっかく出来つつある信頼をなくしちまうのは確かに面倒だし、せいぜいこの姿で こいつの同情心を利用してやるか。
最もそんな考えは次の一言で吹っ飛んじまったが。
「 ここを出たらさ~ 君のことを こんなふうにしたひどいやつを一緒に殺しに行こうね 」
………。
そういやこいつシリアルキラーだった。
俺がバットマンと追いかけっこの末にこうなったって知ったらどんな反応を示すかな ? 確かこいつ散々バットマンに 、ラブレターを送りつけた挙句 自分が勝手な幻想を相手に抱いていただけにも関わらず……勝手に失望して 相当恨んで根に持ってるよな …。 こいつが どんな反応するのか見てみたい気もするが、さすがにちょっと面倒か。 よし 、 しばらくの間黙っておこう。
しっかし、よく喋る。完全に興奮状態だなこりゃ。 さてどうやって宥めたもんかな。 とりあえず俺の方からも軽く触れて子供をあやすように頭をぽんぽんと撫でてやる。
「 来てくれて嬉しいよ。でもお前の顔が見えねぇぜ ?」
そう言うと こいつは慌てて俺から体を離し顔を見る。
「あ、ごめん嬉しくてつい」
手で涙を拭ってやると いかにも嬉しいといった表情で俺を見つめてくる。
「 へぇ、ニュースで見るより可愛い顔してるじゃないか」
そう言うとちょっと赤い顔をして俯く。
「 で、俺を見た感想は?なかなかの男前だろ」
なんとなくモジモジとした困ったような表情を浮かべている。 あれ? もしかして皮肉がわからないのかこいつ?
「や~、今のジョークだぜ ?たいがいのやつは俺の姿を見たら悲鳴をあげて逃げて行くからさ。 正直お前にあって嫌われるんじゃないかって怖かったんだぜ。 でも…その様子じゃ大丈夫みたいだな」
そう言うと、ひどくショックそうな顔をする。
「君のこと嫌いになるはずがないじゃないか!」
そう言って顔を近づけて唇を押し当てられた。
えっ~と、今のはキス? 思春期のガキかよ…。
女とキスのひとつもしたことがねえのか。 あ、また赤くなってうつむいてやがる。…こいつ絶対童貞だよな。うん、間違いない。

と言うか 性愛(エロス)・友愛(フェリア)・親愛(ストルゲー)の違いがわかってない。
愛情不足どころか全く愛されたことがない様だから、 自分が持っているのが 友情なのか恋愛感情なのか 相手に対してどう振る舞えばいいのか全く分からないらしい。
人間の他者ヘの愛情の種類は4種類、 これに無償の愛・博愛(アガペー)も含まれるが、 個人から個人へ向ける愛は前記の3種類である。 この3種類は親和性が高く お互いに変化する流動的なものである。 友人から恋人へ、恋人から夫婦へ。

ならばこの圧倒的に愛情不足の男に友愛だけでは足りないかもしれない。 手っ取り早くエロスも足してやろうか? もっともこいつがその気を起こせばだが。
…… まあこの外見じゃ無いよなぁ、 いくらなんでも。
赤くなってモジモジしているこいつに 抱きついてキスをする。口腔に舌を入れ、 歯茎に触れ、貪り尽くすようなディープなヤツをしてやる。
ボン!と、顔から火がでるように真っ赤になる。
「なんだよ先にしてきたのはそっちだろ。俺とするのは嫌か」
「 嫌じゃない 」
あー、真っ赤になってオタオタしている。面白い …って、あれベッドに押し倒されてる? つーかこいつ明らかに興奮してる ちょっと展開早くね? 俺もその気だけど。 上着のボタンを一つずつ外されてズボンに手をかけられる そこで手を止めて 欲情した目で俺の方まっすぐ見る。
「その…私が抱く方でいい?」
いやいやいやいや!ここまでしといて思いっきりそのつもりじゃねーか !!
「お前経験は 」
「……ない」
「 じゃあちゃんと教えてやるから抱いてみろよ 。そこの机の引き出しにワセリンが入ってるから出してくれ」
「これ? 」
ちなみにこのワセリンだがあくまでただれた肌用である。 しょっちゅう血が滲んでいるのでワセリンとステロイドは絶えず支給されている。
「何をするの?」
「何をって、…男同士ならどこに入れるか分かってるだろ? 女性のと違って濡れないから、ならしておかないと」
で、こいつがガン見する中 、自分でならし始めたわけだ。
全身舐め回すような視線にゾクゾクする。
「はぁ。…あぁ……ぁぁ…あ」
相手の視線を感じながらこんな自慰めいた行為を有するのが こんなにも感じるものだとは思わなかった。 ……視姦されている。 こんなみっともない姿を見られて もしここでこいつが冷めてしまって 辞めると言い出したら こんな屈辱はない。 自分自身のモノがいきり起っているのが分かる。 クソ忌々しい! 何だって自分でしようなんて思ったんだ。 自分で指を突っ込んで乱れる様を見られるのが こんなに恥ずかしいなんて。 こいつに手首を掴まれる。
「指2本とも入っちゃったね 。」
「あっ…あぁ」
ずるり…と手首を掴まれ指を引き抜かれる。
「 ヒクついてる可愛い」
……捕食者の目で俺を見る。
あぁ、こいつもこんな顔するんだな。
「う"っ…ぃいい!!あ"あぁ…ぁっ!!」
内蔵を圧迫し前立腺を押し潰すような刺激に悲鳴を挙げる。
相手のものを受け入れただけなのに何だよこれ 内側からくる快楽に頭の中が真っ白になっている。
はあ… はあ… はあ… ああっ、ちくしょう!ちょっとこれ感度が良すぎるんじゃねーか!……くそ、ご無沙汰だったからか。
「ごめっ…! 痛かった?」
「 あーもう気を使うなよ … はあ… はあ…… はあ… はあ…きっちり中まで入っちまったら痛くねえから。 いいから 自分がいいように動かしてみろ」
全く……血走った目をしてやがるくせに、 イチイチこっちに気を使ってくるし 、人に壊れ物みたいに触れやがって 。肌がケロイドになってるせいかすっげえ敏感…… めちゃくちゃ快楽を拾ってくるんだが…頭が追いつかねぇ。自分のモノが先走りを溢していてそれが太ももを伝って流れてくるのが分かる。
「あっ…あぁ……い"っ!!あぁ……!!」
揺らされるたびに体中を駆け巡る快楽と刺激に 声が漏れるし 涙がにじむ。
「……あ"あ"ぁぁっ!!」
自分のペニスから勢いよく精液が吹き出した。最悪だ!最悪だ!最悪だ! こいつにマジマジ見られるし、 先にイっちまった。
当然こいつはまだイってないから ピストンは続いてるわけだし 奥までゴリゴリ入ってきて 性感帯を刺激する。
「あぁ…ぁ"あ"っ…はぁ、…きもちいい……もっとぉ♡」
……あぁ、ダメだ2回目いきそう。

…………。
だめだ完全にこいつのペースだ。
おまけに途中からよく覚えてねぇ。
気が付いたら朝だ。……で、こいつに抱きつかれたまま 目を覚まして …シーツは血と精液と汗でベトベトになってるし、動くと自分の股からドクドクと白濁が流れ出て、 昨日軽い気持ちでこいつを誘った俺をぶっ殺してやりたい気持ちになったってわけだ。
…まぁいい、後でシーツは看守にでも変えさせてやる。
俺だって流石に気まずい。こいつが起きたらどうしよう? …うーん。
そうこうしているうちにコイツが目を覚ます。もぞもぞと 動き出して 満面の笑みを浮かべて俺の方を見る。
「 おはよう」
俺を抱き寄せてキスをする。
思春期のガキみたいな 子供じみたやつじゃなくって、 ちゃんと唇を這わせた甘いキス。
……やればできるじゃないか。

性愛(エロス)と、友愛(フェリア) を混ぜちまったのはあまり良くなかったかもしれない、 今後もこの関係がずっと続くってことだ。
……まあいい…だったら、これから俺好みに作り変えていってやろう。
ベッドで主導権を奪われるのは癪だからな。

end

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